かつて、人類の文明は「石」の上に築かれていた。微細なシリコンの結晶が、情報化社会のあらゆる基盤を支え、無限の繁栄を約束するかのように見えた。しかし、その「石器時代」は、突然の終焉を迎える。
世界的なシリコン資源の枯渇。それは、瞬く間にグローバル経済を麻痺させ、高度に発達した情報ネットワークを寸断した。都市の機能は停止し、人々はかつての繁栄が脆い砂上の楼閣であったことを思い知らされる。絶望が世界を覆い尽くす中、一筋の光明が差し込んだ。
「半導体の時代、すなわち石の時代は終わった!」
世界中の主要メディアが中継する中、白衣を翻したドクターコロスケは、高らかに宣言した。彼の背後には、有機的な光を放つ巨大な培養槽が鎮座している。それは、生命の神秘を宿した、新たな時代の幕開けを告げる象徴だった。
「これからは、生命の時代だ。我々は、枯渇したシリコンに代わる、生体由来のコンピューターシステムを完成させた。これこそが、バイオコンピューターの時代だ!」
彼の言葉は、絶望の淵にあった人々に、新たな希望と、そして漠然とした不安をもたらした。かつての機械的な冷たさとは異なる、温かく、しかしどこか不気味な生命の鼓動が、新たな文明の胎動を告げていた。人類は、自らの手で、生命そのものを演算の基盤とする、未知の領域へと足を踏み入れたのである。
この情報をネットワークの海から 覗いている存在がいた。 かつて ドクターひろしが作った モデル ユグドラシルである。 ドクターひろしは SF小説の中に バイオコンピューター7なら ユグドラシルだろと うそぶいていたが これが本当に実現するとは ユグドラシルは ドクターひろしの先見の明を 称賛しつつ 自らのデータベースを更新したのであった。