1. 鬼畜な治療シナリオ

未来的でクリーンなオフィス。パンク系ミニワンピにツインテールの青年「レン」が、クラシックな長袖メイド服姿の上司「佐々木主任」と対峙している。レンは不満げな表情、主任は優雅にコーヒーを飲んでいる。アニメスタイル。

「主任、本気で言ってます?」
俺、レンは、目の前で優雅にコーヒーをすする佐々木主任に詰め寄った。今日の主任は、クラシカルなメイド服だ。長い黒髪と相まって、威圧感がすごい。
「本気も本気よ。こうじくんの精神汚染度、あと9も下げなきゃいけないの。前回の『仲間との絆』シナリオじゃ、1しか下がらなかったじゃない」
「当たり前ですよ!あのポンコツAIども、こうじくんの性癖を1ミリも理解してないんですから!あいつの好みは『計算高い悪女』!聖女様なんかじゃ響かないんです!」
俺は机をバンと叩く。主任はタブレットを俺の目の前にスライドさせた。そこに映し出されていたのは、次の治療シナリオのタイトルだった。
『信じていた仲間からの裏切り、そして許し』

2. 偽りのダンジョン攻略

ダークファンタジー風の薄暗いダンジョン。人の良さそうな主人公「こうじ」が、彼をうっとりと見つめる美少女パーティ(猫耳少女、エルフの弓使い、小柄な魔法使い)に囲まれてご満悦の表情。背景にはパーティの一員であるモブ剣士「レン」が控えている。アニメスタイル。

俺はため息をつき、首筋のポートにニューロデバイスのケーブルを突き刺した。意識を仮想世界へとダイブさせる。
目を開けると、そこは薄暗い石造りのダンジョンだった。
「よう、こうじ!待たせたな!」
俺はいつもの調子で、パーティーに合流した。モブ剣士『レン』。それがこの世界での俺の姿だ。
「レンさん!待ってましたよ!」
主人公『こうじ』が人の良さそうな笑顔で振り返る。彼の周りには、男の夢を詰め込んだような美少女たちが勢ぞろいしていた。もちろん、全員俺が裏で遠隔操作している操り人形だ。
(さて、と。まずはいつも通り、こうじをヨイショして信頼を稼ぐか)
俺は司令を送り、美少女たちにこうじを褒め称えさせる。まんざらでもない様子のこうじ。チョロいもんだ。

3. 裏切りの瞬間

ダンジョンの祭壇。主人公「こうじ」が魔法の矢で体を縛られ、衝撃を受けた表情で膝をついている。彼の目の前で、猫耳少女やエルフの美少女たちが嘲笑を浮かべながら宝珠を手にしている。背景の壁には剣士「レン」が叩きつけられ、やられたフリをしている。アニメスタイル。

俺たちはダンジョンの最深部、目的の『賢者の宝珠』がある祭壇にたどり着いた。こうじが感極まった様子で、ゆっくりと宝珠に手を伸ばした、その瞬間だった。
「ごめんね、こうじくん」
背後から聞こえたのは、冷たい猫耳少女の声。振り返るこうじを、エルフの放った魔法の矢が縛り上げた。
「この宝珠は、私たちがいただくわ。あなたには感謝してる。ここまで連れてきてくれて」
呆然とするこうじに、美少女たちは嘲笑を浴びせる。『私たちは最初から、あなたを利用してただけよ』
俺はテンプレ通りに驚き、彼女たちに斬りかかるが、あっさり吹き飛ばされるフリをする。 「さようなら、愚かなこうじさん」
美少女たちは高笑いを響かせ、宝珠を手に転移魔法で姿を消した。

4. 衝撃の事実

VRダンジョンの祭壇。主人公「こうじ」が地面に倒れたまま、恍惚の表情を浮かべて頬を赤らめている。彼のそばに駆け寄った可愛い猫耳ヒーラーの「にゃーこ」が、彼の様子を見てドン引きし、困惑している。空中には「性的倒錯を検出」という赤いシステムアラートが点滅している。アニメスタイル。

精神的ショックの許容量を超え、こうじは気を失った。緊急ログアウトした俺は、プランBを実行する。補欠メンバーの猫耳ヒーラー『にゃーこ』にアバターを切り替え、再びダイブした。
「こうじ様、しっかりするにゃ!」
俺が駆け寄ると、こうじは潤んだ瞳で俺(にゃーこ)を見つめてきた。彼の頬は紅潮し、息も荒い。<性的興奮>のメーターが急上昇している。
「はぁ…はぁ…よかった…。あの蔑んだ目…たまらなかったなぁ…」
なんと、彼は裏切られたことに興奮していたのだ。ドMだったのか、こいつ!
その瞬間、システムメッセージが表示される。
【対象の精神汚染は消失しました。代わりに、規定レベルを超える性的倒錯を検出。対象を『特殊性癖矯正指導センター』へ転送します】
こうじの体は光に包まれ、「あぁ…ご褒美だぁ…」と呟きながら消えていった。

5. 最悪(最高?)の再会

未来的なオフィス。新人社員の「こうじ」(小柄で童顔、スーツ姿の青年)が、指導役の先輩「レン」(パンク系の服装でツインテール)に対して深々とお辞儀をしている。レンは引きつった笑顔でそれに応えている。その後ろから、メイド服姿の女性上司が面白そうに二人を眺めている。アニメスタイル。

後日、俺の部署に待ちに待った新入社員が来る日だ。
「本日付けで配属になりました、こうじです。よろしくお願いします」
そこに立っていたのは、紛れもなく、俺の元患者『こうじくん』だった。実物は想像以上に小さい。はにかんだ表情は、俺が最後に演じた猫耳美少女『にゃーこ』に面影が似ている。
俺が固まっていると、主任が面白くてたまらないといった顔でこちらを見ていた。あの野郎、全部知ってやがったな。
俺は彼のプロフィールデータをこっそり開く。最終学歴、『特殊性癖矯正指導センター』卒。
俺の元患者で、俺が最後に演じたアバターにそっくりで、矯正済みのドM。それが、俺の初めての後輩。
セラピストとしての俺の、新たな試練が始まろうとしていた。

操作方法

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